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ローランド株式会社

BUILT WITH Qt

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ローランド株式会社

1972年の創業以来、心に潤いや豊かさを与え、世界共通のコミュニケーションツールにもなる「音楽」を支える電子楽器を作ってきた。ピアノやシンセサイザーなどの鍵盤楽器、ドラム&パーカッションなどの管打楽器、シンセサイザー音楽制作に関わるクリエーション関連製品、放送・コンサート・イベント・会議などで使用される映像音響製品、世界的に高いブランド力を誇るギター関連製品など、多彩なポートフォリオを提供し、身近に音楽を楽しめる機会の創出に力を注いでいる。

電子楽器のグローバル企業が新製品のGUI開発にQtを活用
マルチプラットフォーム対応で開発効率を向上

Qt ソリューションハイライト

設計自由度やスケーラビリティ、柔軟性などのカスタマイズ性能が大幅にアップ

マルチプラットフォーム対応のGUI開発で開発効率の向上と不具合発生の減少を両立

シミュレーターの活用で実装後の動作確認時間が1時間から5分に短縮

電子楽器や映像音響製品をグローバルに展開するローランド株式会社は、業界が注目するダイレクト・ストリーミング・AVミキサーの新製品のタッチパネルにGUI開発フレームワーク「Qt」を活用。開発・実装・確認の時間短縮や、マルチプラットフォームによる開発効率の向上、多言語化への対応などを実現した。

社内外の開発リソースを確保するため独自スクラッチからの脱却を目指す

ローランドは1972年創業の電子楽器メーカだ。50年以上の歴史で蓄積した技術力と革新的なアイディアを武器に、グローバルに向けて様々な製品を展開。音楽やエンターテインメントの世界に革新をもたらし、著名なミュージシャンやプロクリエイター、アマチュアユーザーのイノベーションを喚起し続けてきた。“Roland”ロゴが信頼の証となっているドラムやシンセサイザーなどの電子楽器や音響映像機器は世界中のライブ会場、イベントステージ、レコーディングスタジオなどで目にすることができる。

そして2023年2月と4月に発売し業界で大きな話題となったのが、ダイレクト・ストリーミング・AVミキサーの「VR-120HD」と「VR-6HD」だ。これらは、ハイブリッドイベント(オンラインとリアル会場で同時に行うイベント)に必要な映像入出力や合成機能をコンパクトなボディに集約し、可搬性を高めて機器の接続や操作をシンプルにすることで、現場オペレーターの負担軽減や多様な要望に柔軟に対応する。特徴は、高い操作性を実現するタッチパネルを搭載したこと。映像入力や静止画、動画コンテンツなどすぐに出力したい画面構成を呼び出すことができ、オンラインとリアルの会場に合わせた画面構成を個別に設定・操作することが可能となっている。このタッチパネルのGUIはQtのフレームワークで開発された。

ローランド浜松研究所 Electronic Instrument 開発本部 ソフトウェア開発部 Live Production 開発グループ リーダー 辰井 義信氏は、「PCのアプリやiPadアプリで実現していた機能や使い勝手をVR-120HDやVR-6HDのGUIで提供することで、操作性や生産性の向上などを図る目的がありました」と語る。

従来、ローランドでは伝統的に製品のGUI画面は、カテゴリや製品ごとに独自にスクラッチで開発が行われていた。そのため、ドキュメント類が充分に用意されず、開発担当者が限定されるほか、メンテナンスの属人化や、機能追加・不具合修正時の工数負担などの課題があったという。辰井氏は「その状態では外部に開発委託をすることも難しくなっていました。社内外の開発リソースを確保するためにも、スクラッチからの脱却が必要でした」と振り返る。

 

設計自由度や拡張性、柔軟性などカスタマイズ性能が大幅にアップ 

同社が最初にQtに注目したのは、VR-120HD/VR-6HDの開発プロジェクトが開始される以前の 2014年頃。組み込みLinuxでコマンド制御によるネットワーク機能を製品に取り込む目的で、選定したメーカのSoC(System on Chip)のリファレンスデザインにQtが含まれていたのがきっかけだった。そのメーカのGUI向けSoCを使えば、製品のGUIはもちろん、WindowsやMacOS向けの設定アプリをトータルにQtで開発できると考えたという。「当時は、組み込みLinux、Windows、Macの各OS向け設定アプリ開発は、それぞれスクラッチで個別に作っていましたが、かなりの工数がかかっていました。Qt以外にマルチプラットフォームに対応したGUI開発フレームワークの存在を知らなかったので、大きな可能性を感じました」と辰井氏は述べる。また、オーディオミキサー向けの設定アプリをスクラッチで開発していた時は単純な機能しか表現できなかったが、Qtで開発を行うと設計自由度やスケーラビリティ、柔軟性などのカスタマイズ性能が大幅にアップしたという。


Qtの利便性が社内に認識されることにより、Qtユーザーは日本、メキシコを含めた北米、開発委託先を含めると十数名に増加。その結果、ライブミキシングコンソール「M-5000」や、マルチフォーマットビデオスイッチャー「V-1200HD」、ダイレクト・ストリーミング・AVミキサー「SR-20HD」、音楽制作用のプラグイン音源やソフトウェアを提供するクラウドサービス「Roland Cloud」の管理アプリなど、ハード・ソフトを問わず様々なGUIを創出。その成功体験がVR-120HD、VR-6HD、そして2024年6月に発表した最新機種のV-80HDの開発にもつながっていった。

 

VR-120HDには物理的なフェーダーやつまみのほか、Qtで開発した7インチの大型タッチスクリーンを装備。シーン・メモリー、マクロ、シーケンス機能などの煩雑な操作を簡略化し、詳細な設定項目にすばやくアクセス。イベントやライブ配信の進行を円滑に進めることができる。

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ローランド株式会社
浜松研究所
Electronic Instrument 開発本部
ソフトウェア開発部
Live Production 開発グループ

リーダー
辰井 義信 氏

 

QtのGUIシミュレーターを活用し実装確認時間が1時間から5分に短縮 

Qt活用のメリットは、主に次の3つが挙げられるという。1つ目は、マルチプラットフォーム対応を活かしたPC上のシミュレーターによる実装時間の短縮だ。従来は、実機にアプリケーションを実装してから動作を確認していたので、その作業に最大1時間程度かかり、1日最大8回しか確認ができなかった。Qt導入後はPC上のシミュレーターで、最短5分程度で確認できるようになり、1/10以下の短いサイクルでの開発・実装・確認が可能になった。辰井氏は「特にコロナ禍でテレワークにシフトしていた時期には大変役立ちました。Qtを使っている製品はハードウェア製品を自宅に持ち帰らなくても、論理的な部分をGUIシミュレーターだけで確認できる仕組みになっているのでとても便利になりました」と評価する。

2つ目は、マルチプラットフォーム対応による開発効率の向上である。以前は、組み込みLinux、Windows、Mac向けの各GUIを開発後、それぞれのOSで確認作業が必要だったが、Qtではほぼ同じソースコードを使えるため、確認時間の削減のほか、特定のOSだけに不具合が起こるリスクも減少。動くという想定のもとで使えるようになったという。

3つ目は、開発リソースの有効活用だ。上記のように開発時間が削減されたため、開発者は多言語化などユーザーに役立つ機能の実装に専念できるようになった。特に中国語対応は念願だったという辰井氏は、「Qtは英語のほか、日本語や中国語などにも対応するようになったので、多言語化が容易になりました。特に中国語圏のマーケットも重要視する弊社にとっては不可欠な開発プラットフォームになっています」と説明する。

 

低価格帯製品向けQt for MCUsを採用し高品質なユーザー体験を提供する予定 

現在Qtを採用しているのはパワフルなCPUを搭載した中・高価格帯の製品になっているが、今後は組み込みLinuxで実現する機能が不要であれば、比較的チップコストが低いMPU(Micro Processor Unit)やMCU(Micro Controller Unit)を採用する製品にも広く活用したいと考えている。そのため、リソースに制約のあるデバイス向けのグラフィックスフレームワーク「Qt for MCUs」を採用する事で、低価格帯の製品でも高品質な画面開発を実現し、中・高価格帯製品に近いユーザー体験を提供できるようにしたいという。

これまでの一連の取り組みを振り返り、辰井氏は次のように評価する。「Qtはマルチプラトフォームの汎用性やシミュレーターの効率性、多言語対応の生産性のどれもが高いレベルにあり、VR-120HD/VR-6HDなどの開発においても重要な役割を果たしてくれました。また、The Qt Company日本スタッフの顔の見えるサポートにも感謝しています。弊社からの度重なる問い合わせにも真摯に対応してくれたおかげでトラブルもなく製品をリリースできました。今後も開発は続きますが、変わらぬ伴走支援を期待しています」

身近に音楽を楽しめる機会の創出に力を注ぎ、常にゲーム・チェンジャーであり続けるローランドのグローバルな挑戦を、Qtはこれからも全方位で支え続ける。

 

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