医療技術が進化するにつれ、医療機器の機能性と革新的な特徴は今後も最も重要な要素であり続けるでしょう。しかし、これらの特徴に効果的にアクセスするための入口は、適切に設計されたユーザーエクスペリエンス/ユーザーインターフェース(UX/UI)です。世界中の規制当局は、医療機器の適切な使用と有効性に対するこれらの要素の影響をますます認識するようになっています。例えば、IEC 62366-1や欧州医療機器規則(Medical Device Regulation - MDR)および米国食品医薬品局(Food and Drug Administration - FDA)の指令を含む規制の枠組みやガイドラインでは、現在、開発プロセスにおいてユーザーのニーズを考慮した設計を行うことの重要性を強調しています。
この直感的で使いやすいデバイスへの移行は、「Visionary Voices of Tech」ウェブセミナーの「Revolutionizing Healthcare: The Future of Intuitive Medical Devices (医療革命:直感的な医療デバイスの未来)」でも取り上げられました。その好例が、Clariusのポータブル超音波診断装置です。この装置は、スマートフォン的なインターフェース、携帯性、利便性という現代のニーズを満たしており、業界に革新的な変化をもたらしています。
分析による医療機器UIデザイン向上
直感的なユーザーインターフェースを開発する上で重要なのは、機能性と同時に理解しやすさを保証することであり、これはユーザーの採用にとって極めて重要です。多くの場合、ユーザーはソフトウェアが提供するすべての機能を知らず、貴重な機能を利用できないままになってしまいます。隠された機能や埋もれた機能は利用されません。ユーザーのタスクや目標に関連する機能のみが採用されるのです。また、ユーザーはユーザーエクスペリエンスに関するフィードバックを提供したいと考えており、新規ユーザーは効率的な導入プロセスを必要としています。そのため、ユーザー中心の開発はこれまで以上に重要であり、特に医療業界では欠かせません。ユーザーの受け入れが不十分であると、医療従事者の精神的な負荷につながり、最終的には患者ケアに影響を及ぼす可能性があります。
さらに、遠隔医療、個別化医療、コネクテッド医療機器に対する需要は、コロナ禍以降大幅に増加しており、専門家だけでなく患者やその家族など、より多様なユーザー層を生み出しています。これは、より幅広いユーザーに対応できる、より適応性のあるデザインを創出する必要性を強調しています。実際のユーザーデータは、直感的なデザインと反復的なUX/UIの改善を導くことができます。
成功するソフトウェアや製品を開発し、提供するには、機能開発を顧客ニーズに一致させる必要があります。製品やデバイスの使用状況やパフォーマンスに関する収集データに基づく分析により、開発者、デザイナー、製品マネージャーは、ユーザーエクスペリエンスを最適化する最善の方法について、情報に基づいた意思決定を行うことができます。さらに、分析主導の洞察により、テストケースをユーザーの行動と一致させ、テスト範囲を改善できる脆弱な領域を特定することができます。
医療業界では、医療機器の市販後調査において、機器の使用状況、応答性、機能性に関するデータが極めて重要です。米国国立衛生研究所 (NIH) によると、新しい治療法や機器がエンドユーザーにとって安全かつ効果的であるかどうかを判断する主な方法は臨床試験です。臨床試験は3つの段階から構成されています。最初の2段階は、機器が機能するかどうかを判断するパイロット段階と、機器が安全かつ効果的であるかどうかを判断する決定的な段階です。3段階目となる市販後調査は、臨床試験の最初の2段階では明らかにならなかった医療機器の安全性と有効性に関する情報を明らかにすることを目的としています。医療機器メーカーは、21 CFR Part 820およびISO 13485に準拠するために、調査要件を満たさなければなりません。
医療機器の機能性とユーザビリティ分析の活用
Qt Insight は、アプリケーションやデバイスの利用状況に関する洞察を提供するために特別に設計された、Qt Groupのクラウドベースの分析ツールであり、特に医療機器の市販後調査におけるデータニーズなど、上記のニーズへの対応に非常に役立ちます。市販後データの主な情報源としては、市販後臨床試験、文献レビュー、顧客事例、顧客調査、専門家ユーザーグループ、サービスレポートなどがあります。Qt Insight は、デバイスの経年劣化プロセスや現場で発生した操作上の問題に関する追加情報を提供することで、サービスレポートを補完することができます。さらに、医療機器を現場でモニタリングすることで、メーカーはエンドユーザーの問題が深刻化する前に、事前に問題に対処することができます。Qt Insightは、過去のデータを使用して将来の動作を予測し、潜在的な顧客の不満を特定し、分析に基づく実用的な洞察を提供することができます。Qt Insightのユーザーフローにより、人気の高いルートを簡単に特定し、ユーザビリティの問題を検出し、ユーザーエクスペリエンスを向上させるためにフローを分析することができます。
Qt Insightのダッシュボードでは、最も使われる機能、最大使用率、地理的分布などのさまざまな指標によるアプリケーションの使用状況も表示されます。 カスタマイズ可能で、最も一般的に使用されるインタラクション、UIビューの使用状況、放棄率に関する洞察を提供します。 これにより、機能の採用状況を分析し、改善や臨床ワークフローへのより良い統合が必要な領域を特定できます。 さらに、異常、UI更新、リリース前後の比較のためのUIパスを理解することで、医療機器をより直感的にできる領域に関する洞察が得られます。
Qt Insight を使用することで、関係者はデータに基づく意思決定を行い、医療機器のユーザビリティと有効性を改善することができます。また、ツールは、現地テストの最適化やオンボーディングの最適化にも役立ちます。スムーズな初回使用体験は、導入率の向上につながり、デバイスの潜在能力を最大限に活用できることを保証するため、後者は非常に重要です。Qt Insightは、Qtアプリケーションとの統合を容易にし、顧客に完全なデータ所有権を保証し、Qtベースのソフトウェア開発に特有の分析ニーズに対応することで、さらに差別化を図っています。
