本日Qt for Android Automotive 6.8 LTS(長期サポート)版をリリースしました。本リリースは数多くの新機能とバグ修正をもたらすQt 6.8を基にしています。Qt 6.8リリースのブログ記事で全機能のリストを確認できます。
今回のリリースでは、サポートとメンテナンスの期間を3年から5年に延長します。また、欧州連合(EU)で今後施行されるサイバーレジリエンス法規制に対応するため、ソフトウェアセキュリティの向上に必要な情報を記載したSPDX v2.3形式のQtライブラリ用ソフトウェア部品表(SBOM)文書を提供し、自動車業界のお客様をサポートします。
この記事では、まずQt for Android Automotiveにおける最も重要な変更点を列挙し、次にQt 6.8の最も重要なニュースを紹介します。
Qt for Android Automotiveに、Activity View APIを使用してQtアプリケーション内でAndroidネイティブアプリケーションを表示する方法を示す新しいサンプルを追加しました。このサンプルは、Qt CreatorのExamplesフォルダ内、または当社のドキュメント内でご覧いただけます。
CMakeはQt for Android Automotive 6.5以降、推奨され完全にサポートされたビルドシステムとなっていますが、qmakeはQtのRTAプロセスの一部として引き続きテストされてきました。Qt for Android Automotive 6.8以降、qmakeのテストと機能保証は行われなくなります。qmake関連のファイルはサンプルから削除されました。
Qt for Android Automotive は、Qt for Android から最小 CMake 制約を継承します。この変更を反映して、サンプルが更新されました。
Media Session API は技術プレビューを終了し、製品コードとして利用可能になりました。この API を使用すると、複数のアクティブなメディアセッションを制御することができます。詳細は、ドキュメントをご覧ください。
Qt 6.8では、Qt Graphsが完全にサポートされるようになり、開発者はインタラクティブでダイナミックな2Dおよび3Dのビジュアル化を作成するための強力なツールキットを利用できるようになりました。Qt Graphs は、データを生き生きと表現するために必要なレンダリング機能とパフォーマンスの最適化を提供します。Qt Graphs 3D は、Bars3D
の透明性をサポートするようになり、ラベルの余白、タイトル位置、グリッド線のレンダリングをより詳細に制御できるようになりました。Qt Graphs 2D は、QML コンポーネントを使用してカスタムバーをレンダリングでき、積み上げ棒グラフと積み上げパーセント棒グラフをサポートし、バーにラベルを表示したり軸にタイトルを表示したりでき、より多くのデータマッピング API が用意されています。
2Dおよび3DグラフのテーマAPIを統合し、Qt Widgets固有のAPIを別のQt Graphs Widgetsモジュールに移動したため、純粋なQt Quickアプリケーションは、Qt Widgetsに対してリンクする必要がなくなりました。技術プレビュー版であったQt Graphsに対して行った変更の詳細については、こちらのブログ記事を参照してください。
Qt Multimedia はメディアリッチなアプリケーションを構築するための基盤であり、Qt 6.8 ではさらに改善しました。QVideoFrameInput、QAbstractVideoBuffer、QAudioBufferInput により、アプリケーションはカスタムメディアデータを録音セッションに送信でき、QAudioBufferOutput により、デコードされたオーディオデータを受信して後処理を行うことができます。
Qt Quickは、高速でスムーズなユーザーインターフェースを構築するためのモジュールとして、引き続き利用されています。Qt 6.8では、特に複雑なシーンにおけるレンダリング速度を向上させるために、いくつかのパフォーマンス最適化を行いました。Qt Quick Effect Makerは、グローやマスクブラーが追加され、スプライトのアニメーション化や、アイテムを円や弧状に曲げることも可能になりました。これにより、リソース集約型のアプリケーションにおいて、よりスムーズなアニメーションと優れた応答性を実現できます。
今回のリリースにおける重要な追加機能は、Qt Quick シーン内でスケーラブルなベクターグラフィックとして SVG ファイルを統合できる Qt Quick Vector Image モジュールです。これは、解像度に依存せず、応答性の高い UI 要素を作成したい開発者にとって最適なオプションです。異なるデバイスやスクリーンサイズでも、デザインが鮮明で一環したものに保たれます。Qt Quick Shapes モジュールでは、ShapePath 要素が任意のテクスチャプロバイダーアイテムを受け取り、任意の変換を適用して形状を塗りつぶすことができるようになりました。
Qt 6.8におけるベクターグラフィックスの改善については、こちらのブログ記事で詳しく説明されています。
QQuickRenderTargetには、テクスチャ処理をより制御しやすくする新しいAPIが追加され、Qt Quick 3Dを外部エンジン、フレームワーク、APIと統合しやすくなりました。
Qt Quick 3D 6.8は、カスケードシャドウマップとパーセンテージクローサーフィルタリングソフトシャドウを使用することで、より良い影をレンダリングします。
テクニカルアーティストは、PrincipledMaterialの新しいプロパティを使用してフレネルを調整し、頂点カラー属性に基づいてマスクを適用することができます。カスタムマテリアルは、PrincipledMaterialと同じプロパティをサポートするようになりました。
上記の主な追加機能に加え、開発をさらに効率化するためにフレームワーク全体にわたって一連の機能強化を行いました。すべての機能の一覧については、Qt for Android Automotive の変更履歴と「Qt 6.8 の新機能」のドキュメントページをご確認ください。
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