本稿は「Automotive Industry Shifts to Software-First Approach」の抄訳です。
自動車メーカーがソフトウェア企業へと転換する傾向が強まっています。2022年以降、自動車メーカーがゲーム業界から何を学べるかについての議論が活発化しています。その中で一つの教訓として挙げられたのは、従来の単一の物理的製品の製造業者から脱却し、代わりに、SaaSプロバイダーが提供しているような、時間をかけて更新や改善が可能なソフトウェアベースのサービスに重点的に取り組むというものです。
従来の「納品して終わり」というモデルに縛られないことは、自動車メーカーと顧客の間で、進化を続ける動的で持続的な関係を築く利点を提供します。ソフトウェアおよびサービスプロバイダーとしての自動車メーカーは、顧客のニーズを積極的に予測し、より優れたパーソナライズされた製品を設計するようになります。
これは単に顧客データを収集する以上のものです。ビジネスモデルを変革し、消費者行動をより深く理解することで、市場の高まるニーズに適応し、優れたユーザー体験と投資価値の向上を実現することが目的です。
SaaS(Software-as-a-Service)へのシフト
テクノロジーが私たちの生活や多くの職業に欠かせない存在となっているため、製品やサービスを消費する際の私たちの期待も、テクノロジーが提供できるものに基づくようになっています。その一例が、Care by Volvo や Porsche Passport のようなサブスクリプション型の自動車サービスの台頭です。これらのサービスでは、顧客が月額料金で車両群を利用でき、好きな頻度で車を乗り換えるオプションが提供されています。
したがって、自動車用ソフトウェア開発ツールがより重要な役割を果たすようになるにつれ、自動車メーカーはソフトウェア企業への転換を検討すべきです。 そうすれば、自動車以上のものを提供し、車内でのユーザー エクスペリエンスを向上させることに集中することができます。 昨年 11 月に開催された Qt World Summit #QtWS2023 のセッション「HMI UX/UI 開発への非ゼロサム アプローチ」で、Qt プロダクト マネージャーの Patrick Thurman 氏は、業界のビッグネームであるメルセデス・ベンツやヒュンダイのような業界の大企業が、ディーラーを通じて自動車を販売したり、ハードウェアを販売したりするだけでなく、より高いマージンやライフタイムバリュー、より低いコストで収益化したいと考えていると述べました。 しかし、自動車OEMはSaaSビジネスモデルに移行するために、ソフトウェア・プラットフォームを構築する必要があります。
"...もし彼らが、実際のソフトウェアプロバイダー、つまりTier 1、Tier 2が何をしようとしているかによって常に振り回されているとしたら、彼らは問題に直面し始めるでしょう。なぜなら、突然、自分が望む方向へ進めなくなり、サプライヤーの動向に引きずられることになるからです"
- Patrick Thurman, Qtプロダクト マネージャ
Software-Defined Vehicle 時代におけるその他のトレンド
Software-Defined Vehicle（SDV）とは、一般的に、主にソフトウェアによって運用、機能、性能を管理する車両を指します。自動車業界がこのトレンドに適応しているということは、ハードウェア中心からソフトウェア優先へと変化していることを意味します。その一例が、コネクテッドカー技術の登場です。コネクテッドカーは、ソフトウェアとセンサーを使用して、車の性能、位置、運転手の行動に関するデータを収集します。自動車会社は、このデータを活用して、安全性、効率性、ユーザー体験の向上を図ることができます。
自動車業界におけるもう一つのトレンドは、自動車メーカーが競合他社との差別化を図り、市場の需要に対応する機会を常に模索していることです。自動車業界が重要な業種のひとつであるAPAC(アジア太平洋)市場では、自動車メーカーが常に抱える疑問や要求に応える形で、多くの車両に内蔵アプリが搭載されるようになってきました。「自動車のUIを『モダン』にするには何が必要か？」「モダンな体験とは何か？」「どうすれば最先端になれるのか？」といった疑問や要求です。
最後に、HMI開発は、私たちのニーズがコンシューマライズされた体験へと変化する中で、スマートフォンにおけるUX/UIの要素をより多く取り入れています。現在、注目されているのは、単に車がどのようなガジェットを提供できるかということよりも、車に乗っているときにどのような感覚を味わえるかということです。
HMI UX/UI開発における非ゼロサムアプローチ
ある意味、これまでに観察されてきたこれらのトレンドはすべて互いに関連し合い、自動車業界における「ソフトウェア優先の革命」に向かっています。この革命では、顧客のユーザー体験に対する注目と需要が高まり、自動車メーカー（将来的にはソフトウェアおよびサービスプロバイダーへと変貌する企業）との顧客関係が変革的なものへと進化しています。これらのトレンドは、自動車業界において過去に見られたもの、そして今後も現れるであろうトレンドの一部に過ぎません。この業界はまさに「イノベーションのルネサンス」の只中にあり、「次に何をするのか」「どのように限界をさらに押し広げられるのか」といった問いを中心に、絶え間ない進化が続いているようです。
Qtでは、統一されたHMI開発プロセスによるフルスケールのプラットフォームポリシーから、コネクテッドビークルを可能にするコネクティビティツールまで、Software-Defined Vehicleを強化するのに必要なテクノロジーも提供しています。これらのトレンドについてさらに詳しく知りたい方、SDV時代の自動車HMIデザインと生産性の最適化についてさらに詳しく知りたい方は、当社のプロダクトマネージャーであるPatrick Thurmanによる「The Non-Zero-Sum Approach to HMI UX/UI Development（HMI UX/UI開発におけるゼロサムではないアプローチ）」と題された講演の全編をお聞きください。この講演では、Patrickが当社のお客様であるヒュンダイの実際の事例を取り上げ、直面した実際の課題とQtによって到達したソリューションについて説明します。
